悪童たちにお灸 第1話 エッチな男の子たちに
大学の夏季休業期間中に、とある児童支援施設でアルバイトをしました。
主な仕事の内容は、保護者が不在の時間帯に児童の面倒を見ることです。
夏休みの期間は学校がお休みとなり、その分仕事が増え人手が足りなくなるため、夏季限定の短期アルバイトを募集していたのです。
お給料自体は決して悪くはなかったのですが、想像していた以上にたいへんな仕事でした。
まず第一に、児童がなかなか言っていることを守ってくれないことです。
なかでも男児はすぐに悪戯をしたり、暴れたり、勝手にいなくなったりなど⋯
いくら注意しても同じようなことを繰り返してばかりいます。
かといって、万が一のことを考えると放っておくこともできません。
そのため常に目を光らせている必要があり、毎日クタクタです。
そしてもう一つ、実はちょっと困っていることがあります。
それは一部の男の子たちが、なんというかけっこうエッチだったということです。
小学生といえども、高学年くらいになると女性の体への関心がいろいろ芽生えてくるみたいですね。
たとえばこの間も、ある男の子が買ってきたマンガ誌を読んでいたのですが、ページを捲らないでずっと同じページを見てるのに気がついたんです。
それでそんなに熱心に何見てるのかなってこっそり覗いてみました。
そしたらマンガ誌によく載っているグラビア水着のページだったんですね。
男の子は私の気配に気付くと、すぐページを捲ってマンガを読んでるフリをしたけれど(笑)
男の子だし性に興味を持つこと自体は健全なことだと思うけれど、問題なのは実際にエッチなことをしてくる男の子たちがいることです。
アルバイトを始めて気付いたのは、一部の男子がなにげによく体を触ってくることです。
始めは小さい子だし単に甘えてるのかなとも思ったのですが、それにしては触る場所とか触り方がなんかちょっとエッチなんですね。
たとえば一緒に遊んでいるときとかも、太ももとかお尻とかさりげなく撫でてきたりするんです。
それに私の見た限り、常勤の指導員の方にはそういうことはしていないんですね。
他の指導員は皆ベテランの年配の方で、子供たちの扱いもやっぱり手馴れています。
比べて私はバイトで経験もないし怒ったりすることも苦手だから、エッチなことをしてもだいじょうぶだと侮られているように思います。
ただこうしたことってやっぱりデリケートなことだから、注意するにしてもどう伝えればいいのかたいへん難しいです。
思春期の多感な子供たちだし、言い方ひとつでかえって傷つけてしまう可能性もあるし。
そんなこんなで悩んでいるとき、あることがわかったのです。
ある日、子供たちを遊ばせていると男の子3人がベンチでなにかひそひそ喋っていました。
この3人は大の悪戯好きで、よく問題を起こしてばかりいるトラブルメーカーです。
また3人でなにか悪巧みでもしてるのではと不安に感じた私は、後ろからこっそり近づきました。
「今日は何色だと思う?」
「やっぱ白かな」
「じゃ俺はピンク」
「まぁなんだかんだいって、いつも明るい感じの色が多いよな」
「たまには変化球で、黒とかもはいてほしいな」
「さすがにキャラ的にそれはないだろ(笑)」
「でももし黒のレースとかだったりしたら、ギャップがあって逆に興奮するかも」
好きなアイドルの衣装の話でもしているのでしょうか?
そのとき一人が私の気配に気付き振り向きました。
「ねぇ、今何話してたの?」
「別になんでもない」
そう言って三人は、なんとなくばつが悪そうにそそくさと立ち去っていきました。
そのときはアイドルの話でもしているところを聞かれて恥ずかしかったのかなと思い、さほど気に留めませんでした。
それから数日経ったある日、私が台所で洗い物をしていると、窓の外から例の三人の話している声が聞こえてきました。
「⋯昨日は青か」
「たしかにちょっと珍しいね」
「今日は何色かな?」
「ピンク・ピンク・青ときたから、そろそろ白かな」
「なぁいままで見てきた中で、何色が一番好き?」
「うーん、ピンクも捨てがたいけどやっぱ王道の白かな」
「俺もベタだけどやっぱ白が一番だな、イメージとも合ってるし」
「そんでもって、透けてたら最高なんだけど(笑)」
またアイドルの衣装の話でもしているのでしょうか?
でもなにかひっかかるものも感じます。
しかし三人はもう立ち去ってしまったため、続きを聞くことはできません。
なんとなくもやもやしたものを感じながら仕事を続ける中で、ふと気付きました。
⋯そういえばピンク・ピンク・青って、私が着てた下着の色と同じだ。